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編集後記
松井 敏幸
pp.518
発行日 2007年4月25日
Published Date 2007/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403101040
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本号は狭義のIBD(Crohn病と潰瘍性大腸炎)における上部消化管病変の新たな展開を受け,企画された.その意義は,診断面では,上部消化管病変が,①診断契機となる,②Crohn病と潰瘍性大腸炎鑑別困難例の確定診断の補助となる,と思われる.また,治療的な意義は,③Crohn病の高度病変は治療対象となる,にあると思われる.潰瘍性大腸炎の上部消化管病変は極めて興味ある主題である.この問題は,病態生理面では,消化管病変の広がりからIBDの定義に関わる可能性がある.特にCrohn病は全消化管の病変との認識がある.一方,潰瘍性大腸炎では,炎症が大腸に限局することが本症の大きな特徴とされてきたが,手術後の回腸嚢炎に加え,上部消化管病変の頻度が高くなればCrohn病と病態生理を区別することが困難となる.その臨床的な意義はどのように理解されるべきであろうか? 潰瘍性大腸炎の上部消化管病変の病理学的あるいは臨床的な特徴像は本号で初めて明らかにされよう.長期的に見てこの病変がいかに進展するのかを見極めることが「胃と腸」に課せられた命題のように思える.本号では食道病変,胃・十二指腸病変の推移が詳述されている.また,Crohn病上部病変の内科的ならびに外科的治療にも新たな展開が期待できる.本号の論文がこれらに応えていると評価されるなら,本号の企画は成功したと言えよう.
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