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編集後記
小野 裕之
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1静岡県立静岡がんセンター内視鏡科
pp.115
発行日 2011年1月25日
Published Date 2011/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102118
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多発胃癌をとりまく状況は,良性潰瘍による胃切除の減少,IEE(image-enhanced endoscopy)の進歩,ESD(endoscopic submucosal dissection)の急速な広まりなどにより,従前と様相を異にしている.長南は序説で,(1) 切除胃の検討における多発胃癌の特徴,(2) 同時・異時性多発胃癌をめぐる問題,(3) 内視鏡治療と多発胃癌の問題,(4) サーベイランスの問題,(5) 胃癌術後の残胃多発癌の問題,(6) H. pylori(Helicobacter pylori)除菌で内視鏡治療後多発のリスクは減るのか,という6点に整理し,問題提起した.
熊谷論文では,胃癌術後の残胃に発生する癌についてレビューを行っている.胃癌術後の残胃はH. pyloriの持続感染後の発癌準備状態と言える状況にあり,良性潰瘍術後と比べ,発癌期間までの期間が短く,残胃の非吻合部に好発している.今後の課題として,近年早期胃癌の頻度が増加し,噴門側胃切除や幽門保存胃切除などの術式が増えていることから,従来と比べ多発癌の頻度や好発部位が変化する可能性が挙げられており,多数例の長期経過観察例のデータ集積が重要である.
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