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58巻5号「壁内局在からみた胃上皮下腫瘍の鑑別診断」を手に取られた皆さまの中には,上皮下腫瘍という用語にやや違和感を覚えた方も多いと思われる.序説(入口論文)に記載されているように,従来,非病巣上皮に覆われた胃腫瘍は胃“粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT)”と呼称されてきたが,病巣が粘膜深層に存在する場合もあるため,近年は胃“上皮下腫瘍(subepithelial tumor ; SET)”と呼ばれる.理屈はそうでもやはり長年慣れ親しんだ胃粘膜下腫瘍(SMT)という言葉のほうが筆者にはしっくりくる.初学者のころから上皮下腫瘍という言葉で育つようになるこれからの若手は,いずれSMTという呼称のほうが違和感を覚えるようになるかもしれない.個人的には,もともと“粘膜下層腫瘍”ではなく“粘膜下腫瘍”なのだからこの用語のどこが悪い!と繰り言を言いたくなるのであるが.
由無しごとを書き綴ったが,今回の企画のねらいについて,少々説明したい.最近,H. pylori(Helicobacter pylori)感染率の低下によって未感染胃の胃底腺型腫瘍や自己免疫性胃炎に併存する神経内分泌腫瘍など,上皮下に進展する腫瘍性病変を診断する機会が増えている.胃上皮下腫瘍は壁内局在(発生母地となる細胞)により,それぞれに特徴的な形態所見があると考えられるが,十分に整理され普遍的な知見となっているとは言い難い.また,X線や白色光,色素観察,拡大内視鏡観察で診断する際に,表面に病巣がないため,間接的な所見から診断せざるをえない場合が多い.本号では,主に粘膜固有層や粘膜下層に局在する胃上皮下腫瘍を対象として,壁内での病変の局在を,発生母地となる細胞を踏まえて組織学的に解説するとともに,各疾患についてアトラス的に画像を供覧し,炎症を除く,腫瘍/腫瘍様病変の鑑別診断に役立つ内容としたい,というのがねらいである.
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