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はじめに
「胃と腸」の主題として消化管悪性リンパ腫は比較的頻回に取り上げられており,胃・腸管を合わせて本号で15回目を数える.この間,悪性リンパ腫に関連した主な進歩としてmucosa-associated lymphoid tissue (MALT)リンパ腫の概念1),WHO分類(2001)による腸管悪性リンパ腫の新たな分類2)の推奨(Table 1),遺伝子変異・異常の解析の進歩,診断面においてはカプセル内視鏡,バルーン小腸内視鏡の普及が,また治療面ではHelicobacter pylori(H. pylori)除菌療法の胃MALTリンパ腫への普及3)と抗菌薬治療の腸管MALTリンパ腫への導入4),さらにはrituximabなどの分子標的治療薬の登場5)など,この分野の概念,診断,治療の進歩は著しい変化を遂げている.特に上述した治療法の進歩は,日本における従来からの外科切除を中心とした消化管悪性リンパ腫に対する治療法にも変化を来した.現在では治療法選択のうえで,悪性リンパ腫と癌や粘膜下腫瘍(submucosal tumor ; SMT),他の炎症性疾患との鑑別がますます重要となっている.
従来より,消化管悪性リンパ腫の肉眼的特徴がいくつか挙げられており,通常,癌をはじめとしたその他の疾患との鑑別は比較的容易である.しかし,消化管悪性リンパ腫の肉眼所見は症例によって多彩であるため,未分化型早期癌,超高分化胃型胃癌,低分化充実癌,内分泌細胞癌などの一部の癌,GIST(gastrointestinal stromal tumor),カルチノイド腫瘍などの粘膜下腫瘍,胃梅毒,サルコイドーシスなどの炎症との鑑別が問題になる場合がある.また,小腸,大腸における悪性リンパ腫は時に,アミロイドーシスや様々な炎症性疾患との鑑別が困難で診断に苦慮する場合も少なくない.
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