電子内視鏡による大腸疾患の診断・14
悪性黒色腫
後小路 世士夫
1,2
,
出月 康夫
1
1東京大学医学部第2外科
2東京共済病院外科
pp.727-730
発行日 1993年4月10日
Published Date 1993/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402910129
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大腸原発悪性黒色腫の大部分は直腸肛門移行部に発生する.直腸肛門部の悪性黒色腫(以下,本症と略)の術前正診率は極めて低く,40%に満たない2).血栓性痔核に酷似するものや,単なる腺腫と診断されるものがあり,誤った治療計画がなされる.現在でも確定診断は病理学的検索によらざるを得ないのが実情かと思われるが,HMB-45という抗メラノーマ抗体も開発されており,病理学的検索段階での診断の困難性は少なくなった.しかしながら,incisional biopsyは有意に転移を惹起し2),根治手術までの時間は可及的に短くされるべきである.擦過細胞診など細胞採取上の工夫も有用であろう6).進行例や,明らかに腫瘍全体が黒色調を呈する例に対しては,本症の存在さえ念頭に置いていれば,内視鏡診断は決して困難ではない.
術前診断上最も問題になるのは,部分的に点状黒色斑を示すものや,無色素性のものである7).皮膚原発例と同様,本症においても,無色素性のものが10%程度存在するとの報告もあり2,5),決して無視できない.4mm大の微小なもの8)から,超手拳大のもの2)まで報告されており,ポリープ状,SMT様,2型進行癌様など形態学的には非常に変化に富んでいるが,100%隆起成分を伴っている.
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