呼吸器疾患診療メモ
医師の禁煙活動
伊礼 壬紀夫
1
1沖縄県立中部病院・内科
pp.527-529
発行日 1992年3月10日
Published Date 1992/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402901428
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長年の数多くの疫学的,医学的研究の結果,煙草の健康に対する悪影響が認識されるようになり(表1),WHOは煙草を「今世紀最大の疫病」,「予坊しうる最大の病気・病死の原因」として,約20年前から世界の国々に対して煙草の抑制,規制をするよう,くり返し勧告をしてきた.欧米では肺癌死の80〜90%は煙草によるものと推定され(日本では約70%),気管支炎死亡の75%が,膀胱癌死亡の40%が,虚血性心疾患の25%が,そしてすべての癌死亡の30%が煙草によるものと推定されている.さらに,間接喫煙によって肺癌の危険率は25〜35%上昇するとも報告されている.このような煙草関連疾患のために世界で年間約300万人が死亡し,社会経済学的にみても,煙草は社会に対して膨大な損失を与えているとされている(表2).また,世界の森林の約12%は,煙草の葉の生産のために伐採されているという試算もある.しかし,日本はWHOの勧告を無視し,煙草産業,つまり政府(日本たばこ産業の株はすべて大蔵省保有)が率先して煙草の販売,消費を促進し続けているという,信じがたい世界の非常識国になってしまった.
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