今月の主題 ベッドサイドの痴呆学
(editorial)痴呆学—内科医にとって必修の分野
小川 紀雄
1
1岡山大学医学部・脳代謝研究施設
pp.2028-2029
発行日 1990年10月10日
Published Date 1990/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900526
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本格的な高齢社会を迎えたわが国では,痴呆老人に対する関心が医学的にも社会的にも高まってきている.従来,痴呆は精神科領域のものであると考えられがちであったが,これは現実とはかけ離れている.各地での疫学調査の結果は,痴呆老人の居住区分のごくわずかが精神病院や施設であるにすぎず,85〜90%は在宅あるいは一般の病院や診療所であることを明確にしている.このことは,痴呆老人の大部分が主として内科医のもとで治療や介護を受けていることを意味している.この状況は患者にとって大変好ましいことである.なぜなら,全身管理を常に念頭において診療にあたる内科の医療を基盤にして治療を受けることができるからである.したがって,高齢社会を迎えたわが国においては,好むと好まざるにかかわらず痴呆老人に関する知識と診療手技をマスターすることが第一線で活躍する医師に求められている.
代表的な痴呆疾患としてはアルツハイマー型痴呆,脳血管性痴呆,ピック病,クロイツフェルト・ヤコブ病などがあり,老年期痴呆としては前2者が大部分を占めている.アルツハイマー型痴呆については原因はまだ明らかでなく,もちろん治療法や予防法も開発されておらず,介護や問題行動の抑制のための抗精神病薬の巧みな使用が中心となる.
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