カラーグラフ Oncology Round・9
癌性リンパ管症,DICを呈した胃癌の症例
高橋 幸則
1
,
金田 智
2
,
片山 勲
3
1東京都済生会中央病院・内科
2東京都済生会中央病院・放射線科
3埼玉医科大学・病理
pp.867-871
発行日 1990年5月10日
Published Date 1990/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402900223
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癌患者が不幸の転帰をとるまでに描く臨床像は,癌の種類により,さらに個々の患者によりさまざまである.しかし,多彩な病像の土台となる主要病変の種類となると,驚くほど数は限られている.たとえば,癌患者の死因となるのは,感染・出血・癌浸潤の3つのうちのどれかである場合がほとんどである.しかし,実際には出血ひとつをとってみても,患者により出血臓器(脳,肺,胃など),出血のパターン(DICによる出血傾向,癌に侵食された血管の破綻など),出血の程度,原病変の種類などが患者ごとに異なるために,前景に立っ癌患者の臨床像は非常に多彩となるのである.
今回は胃癌にDICが合併し,脳出血で死亡した患者を紹介する.この症例では,骨髄への転移が最初に発見され,精査の後,原発の胃癌が発見された.その間の事情は第8回に提示した不顕性癌(occult cancer)の症例において,リンパ節転移の発見を契機として精査され,子宮頸癌が発見されたのと似ている.すなわち,本症例においても,最初に臨床症状・徴候の前景に立っていたのは,DICと不顕性癌の2つであり,いずれも諸種の癌患者に共通して起こり得る重要な合併症である.
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