書評
—矢野 寿一,笠原 敬 監修 小川 吉彦 著—ケースで学ぶ抗菌薬選択の考え方—耐性と抗菌メカニズムの理解で深掘りする
林 俊誠
1
1前橋赤十字病院感染症内科
pp.485
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229464
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感染症診療のマニュアル本は持っているし,一般的な感染症はだいたい治療できている.とは言え,もしも耐性菌やそれに対する抗菌薬選択について聞かれたら,スムーズに答えられるほど詳しいわけでもない.いっそ専門書を読んでみたいけど,読める自信もない.見慣れない・聞き慣れない菌は,微生物学の本を読んでもしっくりこない.そんなあなたがギャップを乗り越えステップアップするのにおすすめなのが本書である.
第1章は薬剤耐性の総論である.「MICの数字を横読みする」「CEZを使用し続けても,そのMSSAはMRSAにはなりません」など,耐性菌に対する抗菌薬選択に欠かせない基礎知識が満載だ.続く第2章は臨床で主に使用される抗菌薬に対する耐性機序の解説で,ここまでをじっくり読んでも2時間程度で理解できるのが嬉しい.最もよく出合うβ-ラクタマーゼについては特に図が豊富なので,この分野について初めて読む場合でもイメージしやすい.また,AmpCの「心変わり」や複雑怪奇なカルバペネマーゼがわかりやすく解説されてもいる.
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