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visual snow(VS)は日本語では“降雪視”と訳され,視野全体にアナログテレビのホワイトノイズや砂嵐のような細かい点が現れるために,点描のような光景が自覚される現象である.脳外傷,眼疾患,幻覚剤持続性知覚障害などで出現することが知られていたが,1995年にLiuらによって,片頭痛患者に認められる発作後も持続する視覚症状としても報告された1).その後,VSは視覚保続や増強された内視現象など他の視覚異常を高率に合併することが明らかになり,visual snow syndrome(VSS)の概念が提唱された.VSSは片頭痛患者でない者にも認められることも明らかとなっている.現時点ではVSは視覚情報処理システムやネットワークの異常を原因とする症候群の一症状と考えられている.
1995年にLiuらは,持続性陽性視覚性現象(persistent positive visual phenomenon:PPVP)を呈する10名の片頭痛患者の臨床症状や検査所見を報告した1).この視覚症状は,アナログテレビのホワイトノイズ,雪,蟻の隊列,雨などと形容される物体が全視野に重畳する現象であり,点滅を伴う場合もあった.いずれの患者も,神経学的検査と眼科的検査は正常であった.8名で脳波検査が施行されたが異常なく,頭部MRIでは非特異的な両側頭頂葉白質病変や微小な静脈性血管腫を認めるのみで,症状との関連性は明らかでなかった.一方,この研究では一部の症例で,脳血流SPECTが施行されていたが,一貫した傾向は認められなかった.この時点では,この特異な視覚症状は片頭痛の合併症と考えられていた.Jägerらは,PPVPをvisual snow(VS)と呼び,これを呈する片頭痛患者2名と典型的な視覚性前兆を呈する片頭痛患者2名の脳MRIの拡散強調画像とADCマップを解析し,明らかな異常を認めなかったと報告している2).したがって,VSは脳の器質的異常を伴わない機能的変化を反映した現象と考えられた.
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