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亀田総合病院の“あの”マニュアルの第2版が10年を経て出版されました.第一印象は「本当に手のひらサイズ」.500ページと聞くと厚い(熱い)印象ながら,院内PHSの厚さとほぼ同じコンパクトさを保っています.値段も3,080円と読者フレンドリー,そのうえ,八重樫牧人品質,亀田品質というプロファイル.ここまでで,これはもうどう見ても買いのロジックとなります.そのほか,数あるなかからダイジェストで個人的なお薦めポイントを記載します.
このような病院発のマニュアルを見るとき,そこで訓練を受けた医師達が思い出されます.個人的な印象ですが,一緒に職場で仕事をさせていただいたことのある亀田卒の医師たちのカルテは,とても整理されたものだった記憶があります.特に等しく皆同じであったと感じるのは,ヘルスメンテナンスと題されたカルテ末尾の記載でした.本書では第32章の16ページ(pp.468-483)が,この予防医療トピックに充てられていますが,これは病棟でも外来でも重要で,“総合内科・総合診療”的な長期的・包括的ケアを達成するうえでの中心軸を構成する考え方です.そのような丁寧な診療をめざす想いが,このマニュアルに込められています.治療については参考文献とともに,GRADE分類に準じてできる限りの客観性がこの小さな本にびっしり詰まっています.ここまで丁寧にリファレンスや推奨度の方針が行きわたっていることを拝見し,著者の先生方,そして監修のお二方の先生の熱量,教育と医療の質への思い,また作成に伴うご苦労はいかばかりだっただろうか,と思います.このような網羅的かつ米国医療において標準化されている質担保の教育が,国内の病院で行われているということや,またその教育を院外の読者たちに惜しみなく与えてくださる著者の太っ腹な心意気にも感銘を受けました.
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