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病歴は診断プロセスにおいて重要な役割を担っています1).診察では,初見の身体所見情報(視診)とともに,挨拶,そして「今日はどうされましたか?」という言葉を皮切りに始まることが多いでしょう.病歴のセッションは多くの場合,診断における中核となり,その質を規定するものは病歴の“6C”に代表されるような要素(Courtesy,Control,Compassion,Clear mind,Curiosity,Concentration)に分解できます2).そこで得られた情報から自然と(直観的に)鑑別診断の軸となるもの(pivot)と鑑別疾患群(cluster)が想起され,その後に得られる情報と頭の中で突合させながら,鑑別疾患の順位づけを変化させていく3),これがある程度の経験を積んだ医師の一般的な診断プロセスではないかと思います.
では,どのように患者から話を聞くのがよいでしょうか.筆者は,前述の6CのうちControlの柱となる概念として,マールブルグ大学のBanzhoff教授の提唱する「inductive foraging(帰納的渉猟)」の手法が最も理解しやすい概念ではないかと思っています4).これはopen-ended questionによって,患者のストーリーにおいて中心となる問題スペース(problem space)を明らかにしていくという病歴の再現法です.そして概要が明らかになったストーリーをもとに,さらに“解像度”を高めるような質問(descriptive questioning)や,鑑別疾患リストの診断確度を上下させる特異度の高いclosedな質問(triggered routine)を用いながら,現時点での可能性の高い診断(または診断群)に近づいていきます.
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