特集 デキル内科医のコンサルト—専門医が教える隠れたエッセンス
扉
和足 孝之
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1島根大学医学部附属病院卒後臨床研修センター
pp.613
発行日 2020年4月10日
Published Date 2020/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226922
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今から約7年前,私は戦国無双と名付けたフィールドワークを行っている最中でした.それは関東中の救急告示病院で「救急当直」を行うというもので,なぜ数多く病院があるはずの都市部で患者さんの応需困難が起こるのか? また,同じ病院にずっといるとわからなくなる医療のブラックボックスを確認するための実験的な調査でした.ある病院では,胸部X線,血液ガス,血糖測定のみで救急搬送者に対応しなければならず,ある病院ではすべての肺炎にはこの抗菌薬を使うというローカルルールがあり,またコンサルトを行うタイミングや自分が診なければならない診療の幅も施設ごとにかなり大きく異なるということを肌身に感じました.これは自分がそれまで経験したことのない医療の現場であり,そして自分の見ていた医療だけが当たり前のように感じていた自分の視野の狭さを強く恥じたことを鮮明に覚えています.非常勤の当直医師として連戦を重ねていく中で,特に一番難しく,気を使ったことが他科へのコンサルトでした.
コンサルトを依頼する場合には,情報の集約化と簡潔性が重要です.時には相手が理解し映像化できるように情報を伝えるスキルが求められます.一方で,医学が細分化されて専門性が高まっているなか,隣の臨床領域でさえ,まるで外国語のように聞こえ,共通言語が持たれていない,と感じることもあります.また,適切なコンサルトであると思っている感覚は医師の経験や環境によって極めて容易に変動し,クリニカルセッティングとその現場での暗黙知で決まることもあります.
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