書評
—藤田直久 編—これでわかる! 抗菌薬選択トレーニング—感受性検査を読み解けば処方が変わる
青木 眞
pp.524
発行日 2020年3月10日
Published Date 2020/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226783
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2016年5月に開催された先進国首脳会議,通称「伊勢志摩サミット」で薬剤耐性(AMR)の問題が取り上げられ,当時の塩崎恭久厚生労働大臣のイニシアチブの下さまざまな企画が立ち上げられた.国立国際医療研究センターにある国際感染症センターの活動も周知のとおりである.
にもかかわらず,広域抗菌薬の代表とも言えるカルバペネム系抗菌薬の消費が,日本だけで世界の7割を占めるという状況から,(一部の意識の高い施設を除いて)大きく変わった印象が現場に少ない.もちろん,最大の原因は「感染症診療の原則とその文化」の広がりが均一でないことによる.しかし,さらにつきつめると,実は「抗菌薬感受性検査の読み方」が十分に教育できていないことも大きな理由の1つである.感受性検査の結果をS,I,Rに分類して単純に「Sを選ぶ」ことに疑問を抱かない問題と言ってもよい.1つひとつの症例で,ある抗菌薬が選ばれる背景には,感受性が「S」であること以外にも,微生物学的・臨床的・疫学的など多くの理由がある.その理解なしに,適切な抗菌薬の選択は不可能あるいは危険なのである.評者も,群馬大学におられた佐竹幸子先生らとともにNPO法人EBICセミナーの一環として「抗菌薬感受性検査の読み方」シリーズを10年以上にわたり講義してきた.その講義は現在,日本感染症教育研究会(通称IDATEN)に引き継がれている.しかし,そのエッセンスを伝える書物は本書の発行まで皆無であった.
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