書評
—東京都立小児総合医療センター 編 本田 雅敬,三浦 大,長谷川 行洋,幡谷 浩史,萩原 佑亮 編集代表—帰してはいけない小児外来患者2—子どもの症状別 診断へのアプローチ
高橋 孝雄
1
1慶大・小児科学
pp.306
発行日 2019年2月10日
Published Date 2019/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402226048
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われわれが外来診療や救急診療で診る患者の中には,ごくありふれた症状が主訴で一見軽症のようにも思われるが,実は緊急度が高く,家に帰してはいけないケースが存在する.帰してはいけないケースを帰しそうになったが思いとどまった経験や,見逃してしまった苦い経験の一つや二つは思い起こされるのではないかと思う.小児科医なら誰しも,発熱の患者で髄膜炎を見逃すな,腹痛の患者で虫垂炎や腸重積を見逃すな,というように,症状ごとにいくつかの見逃してはいけない疾患に注意して診療に臨むべきことを指導医から何度となく教えられてきたことだろう.しかし,どうすれば緊急度の高い疾患を見逃さなくなるか,ということまでは教わっていないのではないか.本書は,外来診療で家に帰してはいけない子どもを見逃さないようにするための“心構え”を教えてくれる.
本書は2つの章によって構成される.第1章では,患者・保護者の訴えや話を聴く心構えと,帰してはいけない患者を見逃さないようにするための,診療の一般原則が解説されている.第2章では,小児の一般外来診療,救急診療でよくみられる17の症状別に診断へのアプローチが説明され,帰してはいけない症状や徴候(red flags),注意すべき症状や徴候(yellow flags)が明確に示されている.総論の後にはいくつかの症例が呈示され,臨床推論の過程が具体的に述べられており,診療の一般原則が個々の症例においてどのように実践されているかがわかる.取り上げられている29症例の中には読者が経験したことのない疾患があるかもしれないが,症例呈示と解説を読むと,たとえ未経験の疾患であってもその臨床像を把握することができるだろう.
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