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近年,超高齢化社会を迎え心不全患者は増加しつつあり,救急搬送や集中治療ケアを必要とする患者数は心筋梗塞をはるかに超えている.独居,低収入など社会背景に問題がある患者も増えている.このような患者群には,単なる医学的処置と処方だけでは入院が回避できないことが多く,看護師,薬剤師,リハビリ指導士,栄養士,ケアマネジャーなどの多職種が多面的に介入する必要がある.最近の話題として,2016年に日本心不全学会から発表された『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』では,低栄養の評価と介入が急務であるとされ,人生の最終段階においては緩和ケアも必要ということが初めて提唱された.その後,心不全の緩和ケアは2018年度より要件を満たせば加算が可能となり,栄養介入については『心不全患者における栄養評価・管理に関するステートメント(日本心不全学会)』も2018年10月に発表され,あらためてその必要性が論じられた.また,国策として地域包括ケアシステム構想が出されており,今後は在宅医療も視野に入れたチーム医療の重要性がますます高まるであろう.広く心不全について緩和ケアの概念も含めた国民への啓発も必要である.
一方で医学的治療については,『急性・慢性心不全診療ガイドライン』(日本循環器学会/日本心不全学会)の2017年改訂版が発表された.急性心不全では,早期診断と治療開始が予後改善に直結することが判明し,時間経過の概念が新しく導入された.簡単な身体所見から治療を開始する手順も示されている.慢性心不全に使用される薬剤には,バソプレシン受容体拮抗薬(トルバプタン)やSGLT2阻害薬も紹介された.非薬物療法については,日常臨床でも最近,数年間の変化を感じることができる.植込型補助人工心臓を入れる患者も増加しつつあり,僧帽弁逆流に対するカテーテル治療であるMitraClip®も薬事承認された.再生医療などの先端医療も臨床応用が進んできている.心不全はきわめて広範囲な知識と技術を必要とする領域であるが,「心不全パンデミック」が目前に迫っているなか,本特集がより多くの誌者のアップデートに役立てば幸いである.
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