特集 皮膚疾患が治らない!—皮膚科医が教える“次の一手”
扉
出光 俊郎
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1自治医科大学さいたま医療センター皮膚科
pp.1363
発行日 2017年8月10日
Published Date 2017/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225046
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「治らない」とは何か? 日常よくみる皮膚疾患の「治らない」には,さまざまなケースがある.例えば,治療が弱過ぎるために治らないことがある.初めの診断が間違っていて治らないこともあれば,治療中に別の皮膚疾患を併発していることもある.また,良くなったからと自己判断で治療を中断して悪化したときも「治らない」と患者は言う.薬局で「これはこわい軟膏です」と言われて患者が外用していなかったケースもある.そのほかにも,接触皮膚炎の原因が処方した外用薬であったり,顔面の皮疹が実は皮膚筋炎のような内科疾患の皮膚症状(デルマドローム)であったり,再発する紫斑や潰瘍が実は虐待によるものであったりすることがある.これらの可能性を見逃していれば,やはり治らない.さらに,湿布薬(ケトプロフェン)による光接触皮膚炎のように,治癒後も薬剤が皮膚に残存し,患部の光線過敏を繰り返す特殊な「治らない」ケースもある.最近ではインターネット情報が氾濫しており,間違ったスキンケアや外用方法のために治らないケースも少なくない.
こうした「治らない」ケースに遭遇した場合には,剣術で最初の太刀を外されたときにどう体勢を立て直すかに通じるものがあり,パニックを起こすことなく,冷静に対処しなければならない.再診が初診よりも熟練を要するのは診断や治療を修正する必要に迫られるからであり,臨床医の腕と経験の見せどころである.まさに患者の「治らない」は臨床医を鍛えるのである.
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