今月の主題 意識障害へのアプローチ
意識障害の診断
意識障害と鑑別すべき精神症状
武正 建一
1
1杏林大学医学部・精神神経科
pp.1854-1856
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220598
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一般に臨床医学で意識障害という場合には,身体病(脳器質障害)に基づく覚醒水準の低下をさしている.意識野の清明度が減ずるとともに外界を正確に認知することが次第に難しくなり,遂には昏睡にまで至るのが意識障害の段階であるが,これに加えていわば正常な意識障害ともいえる睡眠に夢があるのと同様に,単純な意識の曇りの中にも活発な精神活動が侵入してくることがある.せん妄,アメンチア,もうろう状態といった表現はこの意識の変容をさしているが,こうした病像が精神科で扱われる身体因を欠いた精神障害の症状とも類似することから鑑別診断が必要になってくる.
もっとも,精神科の診療対象である分裂病の緊張病性興奮や躁病性興奮などの急性症状の背後にも本来の意味での意識障害があるのではないかという見方があり,これはただ臨床的側面からだけではなく脳波所見などの点からもなお論じられている問題である.
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