講座 臨床ウイルス学・7
EBウイルス感染症
大里 外誉郎
1
1北海道大学医学部付属癌研究施設・ウイルス部門
pp.144-150
発行日 1986年1月10日
Published Date 1986/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220195
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EBウイルスの医学生物学的特性:普遍性と腫瘍原性
1964年,Epsteinと共同研究者Barrたちが,Lancet誌上にその発見を記載して以来,発見者にちなんで名付けられた未知のウイルス,Epstein-Barr virus(略してEBウイルスまたはEBV)1)(図1)は,多彩な研究展開を経て今日に至っている2,3).本主題「EBウイルス感染症」について述べるにあたり,まずEBVの特性を医学生物学的な視点から眺めることにしよう.これは次の2つに集約される.
1つはその腫瘍原性である.1960年前後を風靡した人癌ウイルス探索の気運のなかで,本ウイルスEBVがアフリカ小児に多発するバーキットリンパ腫中に見出された経緯が,その後のEBVの腫瘍原性研究の端緒となった.いま,ヒト正常Bリンパ球にEBVを接種すると,感染細胞は1,2日後にはリンパ芽球へと形態を変化し分裂を開始,以後無限に増殖を続けて行く.これがEBVによるヒトBリンパ球の試験管内発癌(in vitro トランスフォーメーション)である(図2〜4).一方,EBVをサルの一種マーモセットに接種すると,B細胞性のリンパ腫がひき起こされる.以上から,EBVが癌原活性を示しうるウイルスであることが知られるのである.
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