臨床メモ
院内感染の肺炎
北原 光夫
1,2
Mitsuo Kitahara
1,2
1東京都済生会中央病院・内科
2慶応義塾大学医学部・内科
pp.753
発行日 1984年4月10日
Published Date 1984/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402219012
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院内感染の肺炎は入院中に起こる肺炎であり,入院前にすでに潜伏期となっていて,入院後発病した肺炎はこの範疇には入らない.
一般にこれらの患者の全身状態は良好でないことが多く,原病のために発熱があり,白血球増多もみられるので,肺炎の確定診断を得ることは容易ではない.このような状態にある患者の咽頭部には高い頻度(80〜90%)でグラム陰性桿菌が棲んでおり(colonization),喀痰の培養を行うと数種の細菌が検出され,肺炎の原因菌の決定が困難であることが多い.ある種の細菌が他の細菌より数多く検出されたからといって,それが肺炎の原因菌であるという相関はほとんどないと証明されている.院内感染の肺炎患者の喀痰から得られたグラム陰性桿菌数と肺炎のない患者の喀痰中の細菌数を比較して,まったく差がないことも証明されている(図).咽頭部の細菌による汚染をさけるために,経皮的気管吸引法(transtracheal aspiration)が考案された.喉頭以下は正常では無菌状態にあるので,この方法によって得られた気管・肺分泌物から培養された細菌は原因菌であるといえる.さらに抗生物質投与前に行われた血液培養から検出された細菌と,胸水から得られた細菌は,原因菌と考えて間違いない.
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