臨時増刊特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
I.循環器疾患
心室瘤 VS 仮性心室瘤
吉川 純一
1
Jun-ichi YOSHIKAWA
1
1神戸市立中央市民病院・循環器センター内科
pp.1838-1839
発行日 1980年11月20日
Published Date 1980/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216778
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なぜ鑑別が問題となるか
心室瘤は,通常心筋梗塞後に発生するものであり,真性trueと仮性falseのタイプがある.一般的に見られるのは真性の心室瘤であり,瘤壁は梗塞に陥った心筋によって形成されている.一方,仮性心室瘤は心筋破裂によって生じた心嚢内血腫が器質化したものであり,真性のタイプに比べればかなり稀なものである。この仮性心室瘤の壁がきわめて脆弱な組織から成ることは,その発生過程から考えて当然であり,そこに臨床的な問題点も存在する.すなわち,真性の心室瘤の破裂がきわめて稀なのに対し,仮性心室瘤は容易に破裂する.したがって,仮性心室瘤の場合、早期の診断,手術が必要であるばかりでなく,左心カテーテルや左室造影はカテーテルが瘤壁を突き破る可能性があるため,極力避けられねばならない.つぎに述べる非観血的検査法を中心として両者の鑑別が行われるべきであり,もし心カテーテルを行う必要があるとしても,右心カテーテル,右心からの造影(たとえば肺動脈造影)にとどめる必要がある.
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