演習 放射線診断学
神経放射線学・2
脳血管障害(1)—脳出血
八代 直文
1
,
前原 忠行
1
Naobumi YASHIRO
1
,
Tadayuki MAEHARA
1
1東京大学医学部・放射線科
pp.1254-1260
発行日 1980年8月10日
Published Date 1980/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216644
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
成人に見られる脳出血の中では,高年者の高血圧症に合併し,脳卒中として発症するものの頻度が最も高い.CTの臨床的応用が普遍化した現在では,発症直後の急性期の脳内血腫の診断は非常に容易になったといえる.すなわち,新鮮な血腫は,CT上高吸収域として明瞭に描出されるため,その範囲,進展の診断は,CTによって容易かつ正確に行えるようになった.
CTの普及が進む前は,脳内血腫の診断は気脳撮影および脳圧血管撮影によって行われてきた.とくに血管撮影の価値は高いと考えられていたわけであるが,血種の範囲,大きさに関しての血管造影診断は,血管の圧排,偏位といった,血腫のmass effectによる間接所見に頼らざるを得なかったため,正確を期することは非常に困難であった.それに対して,CTは血腫そのものを直接に高吸収域として描出するため,CTの普及により,血腫の局在診断が非常に容易かつ正確になったことは前述のとおりである.
Copyright © 1980, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.