今月の主題 甲状腺疾患診療の進歩
Graves病
眼球突出症との関係
山本 通子
1
Michiko YAMAMOTO
1
1東京大学医学部・第1内科
pp.720-722
発行日 1980年5月10日
Published Date 1980/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216518
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はじめに
眼球突出は,甲状腺腫,頻脈とともにMerseburgの3徴候として,古典的なGraves病の診断に不可欠の所見であった.しかし日常診療の経験では,教科書に出てくるような典型的な眼球突出症を伴うGraves病患者の割合は必ずしも多くない.一方,臨床的に甲状腺機能正常な者や,稀には甲状腺機能低下症患者でGraves病と同様の眼症状を呈することがあり,それぞれeuthyroid Graves病,hypothyroid Graves病として報告されている.また,甲状腺の組織学的所見が典型的な橋本病患者に眼球突出症を認める場合もある.これらの臨床的事実は,甲状腺疾患としてのGraves病(Graves' thyroid disease)とGraves病の眼症(Graves' ophthalmopathy)とを分けて,図1)のような関係としてとらえると理解しやすい.これについてはeuthyroid Graves病の項で詳述する.
なお,眼球突出症という言葉は,眼球突出(突眼)という所見と同意語ではなく,Graves病に伴う眼症状全般を示す言葉として慣用されている.本稿ではこの言葉をさらに限定してGraves' ophthalmopathyと同じ意味で用いた.したがって,言葉としては矛盾するが,眼球突出を伴わない眼球突出症の例がある2)ことをあらかじめお断りしておく.
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