今月の主題 心膜疾患の臨床
心膜疾患の臨床
太田 怜
1
Satoshi OHTA
1
1三宿病院・循環器科
pp.10-11
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216354
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診断のむずかしさ
知識の少ないときのほうが誤診が少なくて,知識や経験が多くなるとかえって誤診しやすくなる.むかしは,心X線像で心陰影が大きくかつその辺縁が鮮鋭であれば,心膜液貯留と簡単に診断することができた.しかし,うっ血型心筋症という概念が導入されると,この疾患と心膜液貯留との鑑別は必ずしも容易ではない.Ebstein病を知っていれば,心X線像だけからは,それも考えられるであろう.
逆に心膜液貯留は巾着型の心X線像増大だけだと思っていると,これも誤診のもとになる.心膜液貯留の少ないときは,心陰影がそれほど変形するわけではない.心陰影がやや大きく,心陰影の各弓部がよく区別でき,心臓そのものが大きくなっているようにみえるものでも,心膜腔に液体貯留のあることはしばしば経験するところである.この場合は単純な知識だけだと誤診しやすいということになるが,逆に,それらのものを経験すると今度は,単に心臓自身が大きくなったものも心膜液貯留というように誤診する機会がそれだけ多くなる.
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