今月の主題 デルマドローム—内科疾患と皮膚病変
デルマドロームの概念とその歴史
谷奥 喜平
1
1東京医大皮膚科
pp.1554-1558
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208080
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皮膚科の黎明期
"Nature is neither husk nor kernel;she is all in One"なる言葉は,dermadromeなる術言を医学界に導入したWiener,K(1947)のそれである.今日のごとき精密な検査法がなく,視診・触診・聴診・打診が重んじられた古代では,多くの医師が常に皮膚病変に興味を抱き,内臓疾患の初期症状ならびに予後を皮膚症状から読んでいたことは周知の事実である(黄疸,蒼白,急性発疹症での特有な皮疹アジソン氏病の手掌鞍に一致した色素沈着,心臓病でのチアノーゼ,浮腫).したがって,"dermatologia est master medicinae"なる言葉が生まれた.さらに歴史的にも皮膚疾患は古くからAusflüsse innerer ZuständeとみなされていたとのSchonfeld,W. の言葉を俟つまでもなく,皮疹を"ふきでもの",Ausschlag,eruptionの字義で呼んでいた事実はこれを示している.フランス学派のeczéma maladie,eczématoseなる考えが,あらゆる皮膚疾患について自然的な発想とされていた.
近代医学の開祖Virchow,R. の細胞病理学は疾患の本質を局所での細胞と全身との相互反応に置いた.
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