今月の主題 肝疾患のトピックス
検査法の進歩
肝生検による肝硬変の診断とその限界
奥平 雅彦
1
1北里大病理
pp.1290-1291
発行日 1978年9月10日
Published Date 1978/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208021
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はじめに
肝生検材料を病理組織学的に検査することの最大の利点は,肝生検を反復施行することによって組織レベルで肝疾患の病的機転を,経時的に追求し把握することができるということであろう,事実,わが国では患者数の多いウイルス性肝炎の診断には,病期,活動性か非活動性か,進行性か治癒過程にあるのかなどの判定に最も確実な手がかりを得る方法として肝生検が広く行われている.
しかしながら,肝硬変の診断となると事情が異なってくる.というのは,肝硬変の正しい診断は肝の部分性状によって行われるのではなく,肝全体にみられる変化に対して行うべきものだからである.したがって,肝全体の約1/50,000にすぎないとされる針生検材料や,約1/2,500にすぎない外科的なedge biopsyの材料による肝硬変の組織診断は,検査材料の矮小性から考えて,かなりむずかしいものであるという認識が必要である.
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