プライマリー・ケアの実際
腹痛の診断と急性腹症(2)
眞栄城 優夫
1
1沖縄県立中部病院外科
pp.900-903
発行日 1977年6月10日
Published Date 1977/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207255
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急性腹症の鑑別診断
虫垂炎の鑑別診断
腹部全体,上腹部,あるいは臍周辺の内臓痛が,炎症の腹膜への波及とともに,壁側痛である右下腹痛として限局することが虫垂炎の特徴である.しかし,虫垂が盲腸後方に位置するときには,最初から右下腹痛として発症し,骨盤部に位置する虫垂では,膀胱症状をみることもある.普通は2歳以後にみられるが,われわれの経験した最年少者は,生後8ヵ月であった.したがって,乳児期の原因不明の発熱でも虫垂炎は疑うべきであり,試験的腹腔穿刺も活用すべきである.時には,L1,L2のgenitofemoral nerveを介しての睾丸痛が,初発痛として発症することもみられるので,副睾丸炎や睾丸捻転などと鑑別しなければならない.左側の痛みを訴えたり,内臓転位症で,虫垂が左側にあるにもかかわらず,腹痛を右側に訴えることもある.50歳以後,および学童期より前の症例では,穿孔の頻度が高い.穿孔を起こすと,39度以上の高熱となり,腹痛が軽減することもある.穿孔により,レントゲンで腹腔内遊離ガスを認めたり,血清アミラーゼの上昇すら認めることもあるので注意しなければならない.
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