今月の主題 感染症—最近の話題
細菌感染症—原因菌の変遷
ニュモシスティス感染症
樋口 正身
1
1新潟大検査部
pp.1168-1169
発行日 1975年7月10日
Published Date 1975/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206115
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Pneumoaystis cariniiが発見されたのは1909年のことであるが,その病原性の有無については長らく不明のままになっていた.ところが1952年,Vaněkらがこの微生物と乳幼児にみられる間質性形質細胞性肺炎との関係を明らかにして以来,ヨーロッパのみならず広く世界の各地で本微生物による肺炎が報告されるようになった.この微生物は正常の状態において広く各種動物の体内,ことにそれらの気管内に常在しているもので,通常の状態では病原性を示さないが,先天性あるいはコーチゾンまたはその他の薬剤の投与により生体が免疫不全の状態に陥ったとき病原性を発揮する.したがって白血病その他の基礎疾患が存在し,上記のごとき治療を受けた後,その経過の終末に本肺炎を併発してくることが多い.
わが国で最初に本肺炎を発見したのは吉村らで(1961)彼らは本微生物による間質性形質細胞性肺炎の1剖検例を報告した.その後散発的に本症の剖検例が報告されていたが,最近とみにその数を増してきている.しかし臨床的に本肺炎の診断が下されることはほとんどなく,剖検によってはじめて証明されているのが実情である.したがって臨床家が本疾患に関心を持たれることが望まれるので,本肺炎の臨床と病理学的所見について,その大略を述べてみたい.
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