特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
IX.腎・泌尿器系
1.尿定性検査異常をどう考えるか
乳糜尿
高井 修道
1
1横浜市大泌尿器科
pp.1330-1331
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204300
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乳糜尿の原因と発生機転
乳糜尿(Chyluria)とは尿中に脂肪球,線維素,リンパ球,血球,上皮細胞などを混じて,外観上あたかも牛乳あるいは寒天(乳白色ないしは茶褐色)を思わせるようなものをいう.本症の原因としてはフィラリア症(Wucheria Bancrofti)によることが多いが,非寄生性のもの(胸管の炎症性狭窄,機械的圧迫による狭窄,尿路に沿うリンパ管の損傷で尿路とリンパ管の交通が起こる.脂肪血症-糖尿病,腎炎,腎脂肪変性,ジフテリー)もある.乳糜尿だけで高度の栄養障害に陥ることはまれで,長年月乳糜尿があっても栄養障害にはならない者が多い.乳糜尿中に線維素が多いために膀胱内で寒天状,または卵白のごとく固まって排尿障害,尿閉になやまされることがある.
前述のごとく寄生性のものと非寄生性のものとがある.乳糜尿の発生機転についてはまだ決定的なことはわかっていない.林らの組織学的研究によると,リンパ管が腎盂・腎杯に直接開口することを証明している.また臨床的にも逆行性腎盂撮影で腎盂外溢流像が容易に描出される.これらのことから本症では先天的あるいは後天的にうっ滞したリンパ管が腎盂と交通して,胸管中の乳糜が直接尿路に流れて発生するものと考えられる.フィラリア症の時にはWucheria Bancroftiが宿主のリンパ管,リンパ腺,胸管などに寄生し,リンパのうっ滞を起こし,側副路形成が生じて腎周囲リンパ管を経て腎盂と交通して乳糜尿が起こると考えられる.しかしフィラリァ症の場合,乳糜尿が発生する頻度はあまり高くはない.指宿の統計的調査によると,302例のフィラリア症において73例(24.2%)にみられたという.
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