特集 これだけは知っておきたい診断のポイント
II.呼吸器系
2.喘息と咳
咳が長くつづくとき
岩崎 栄
1
1国立大村病院内科
pp.954-956
発行日 1972年7月5日
Published Date 1972/7/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402204163
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原因はいろいろ
咳は呼吸器疾患を診断するための重要な症状の一つである.そして,それが痰を伴なうかどうかは,ことに鑑別診断上役に立つ.もちろん,咳をきたす原因としては,呼吸器疾患だけでなく心臓血管系の病気,とくに老人に見られる慢性うっ血性心不全など,夜間の咳を訴えてくるので呼吸器疾患として誤ることがある.また特定の病気でなく"cigarette cough"といった単なる喫煙による慢性の咳もある.その他,神経性のものから,近年注目されてきた大気汚染による呼吸器疾患に至るまで,たくさんの疾病が"咳が長くつづくもの"として挙げられる.慢性の長くつづく咳は,昔から,わが国では,とくに若年者において,第1に肺結核症を疑い検査をすすめるのが臨床医の常識とされてきた.そしてなお,今日でも,年齢に関係なく肺結核症を忘れることはできないが,慢性で原因がわからない咳を訴える場合,肺癌をはじめ,悪性のものを疑って診断をすすめていくのが現況である.ことに高年齢層でのそれは重大である.
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