メディチーナ・ジャーナル=厚生省
待たれる両眼視機能障害対策
木村 亮太郎
1
1厚生省医務局医事課
pp.131
発行日 1970年2月10日
Published Date 1970/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202957
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両眼視機能障害をめぐる諸問題
年々増加する交通事故の発生原因のなかで,一時世間を騒がせた欠陥車のごとき,車体構造上の問題はべつとして,操縦者の身体条件の面からは,近年,注目をひきつつあるものに,斜視などによる両眼視機能障害がある.物を左右双方の眼で確認することにより,その距離感・立体感を認識する能力を両眼視機能とよぶが,これに障害のある場合には,たとえば,ハイウエーにおける高速運転,ことに追い越しなどには,不確実な目測による判断の誤りから非常な危険を伴う.また,混雑した狭い道の通り抜けに際しては,接触や人身事故につながる可能性が高いことも当然である.また一方,歩行者の側からも,両眼視機能に障害のある者,ことに幼児では,接近する車の目測を誤って,はねられる危険性が大きい.そのほか,航空機の着陸時,錯綜する海峡での操舵など,こと交通に関しては,両眼視機能に障害のある場合には大事に至るおそれのある場合が多い.
事故との関連のみならず,スポーツ,ことに球技では,簡単なフライを落としたり,選球眼の悪さから,から振りの率も高く,跳躍では,踏みきりに失敗してファウルをくり返しやすい.さらに,幼児の場合には,階段の昇降が稚拙で踏みはずしたり,ちょっとした物にもつまづいて,"けが"をしやすい傾向にあることは否めない事実である.
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