目で見る臨床検査シリーズ
赤色尿
林 康之
1
1順大臨床病理学
pp.418-419
発行日 1969年4月10日
Published Date 1969/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202621
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正常尿の色調
通常尿色調は淡黄色—むぎわら色と表現され,おもな着色色素はウロクロームと呼ばれている.もちろんウロクローム以外にウロビリン体,インジカン,ポルフィリン体,ビリルビンなどの諸色素が正常者でもきわめて微量ではあるが排出されており,これらの総合された色調が正常尿の淡黄色となる.また尿は,排尿後放置すると幾分着色を増し,やや暗色になるが,これはウロクロームが排出されるまではウロクロモーゲンとして存在し,空気中で酸化されてウロクロームになるためと解釈されている.ウロクロームは硫酸アンモニウムで沈殿するが,酸性で尿酸と共に沈殿分画されるUroerythrinと呼ばれる赤色調を呈するものの存在も指摘されている.以上のごとく,正常尿の着色でも尿中に含まれる物質の増減によって,ほとんど無色の場合からいろいろな段階があり,詳細は化学構造未知の物質もあってほとんど解明されていない.しかし,日常検査において尿が赤色調を帯びることは直ちに血尿を連想し,患者も血尿あるいは尿が赤くなったことから診療を受けたという場合も少なくない.また尿色調の変化を自覚しない場合でも,単にその外観から尿成分の増減を推定でき,それにしたがって体内病変との関連を考えうることからみれば,診療上不可欠の検査であるといえる.
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