臨床メモ
"忘れつぽい"とは
浦田 卓
pp.112
発行日 1968年1月10日
Published Date 1968/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202077
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おもしろいことに,生理的な"忘れつぽい"現象が訪れるのは,がん年齢つまり45歳前後のようである。もちろんがんを生理的なものというわけではないが,生体のコントロールのしくみの衰えの一つの現われとみなせば"忘れつぽい"も生体のコントロールのしくみの衰えであるといえるからして,"忘れつぽい"とがんを,人生のたそがれを示唆する,精神的機能と身体的機能のそれぞれの二大失調症状といえなくもなかろう。
こういう観点にたつ人たちは,"忘れつぽい"という現象の進行度は,脳の動脈硬化の進展度とある程度平行している,と画一的に推測する。しかし,こういつた説に不利な実験もないではない。たとえば,アメリカで行なわれた実験であるが,生活そのものがかかつている仕事についている70歳以上の老人に,まつたく意味のない乱数表を見せ,これをある一定期間に記憶してこなければ馘首する,と脅したところ,若い人に比べてまつたく遜色のない成績をあげたという。
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