書評
診療所マニュアル[ハイブリッドCD-ROM付]第2版
川井 啓市
1
1湯川胃腸病院
pp.55
発行日 2006年1月10日
Published Date 2006/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107573
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専門志向,大病院志向の時代にあって,医療過疎の地域が少なくありません.本書は近隣に病院がない僻地で孤軍奮闘する医師のために自治医大の卒業生よりなる地域医療振興協会が編集した本ですが,骨格である目的の取り扱い方に医学教育の本来の姿がみられます.
私事で恐縮ですが,昭和33年に京都府立医科大学を卒業後,第三内科を経て,昭和48年に新設された公衆衛生学教室の教授に就任しました.疫学,基礎研究から臨床まで広く人材を集め,マクロの目から医学を見直そうという趣旨のもとに発足した教室でした.しかし,当時,大学は研究至上主義で,医療の現場でも稀な病気,新しい検査法や治療技術に関心が集まり,救急医学やcommon diseaseに対する関心は低かったと思います.現状でもこの傾向は残っていると言えるでしょう.毎年8,000人の若い医師が巣立って行きますが,彼らに望まれていることは社会のニーズを理解して医療にあたることです.私が本書に関心をもったのは,地域医療を充実させようという自治医大創設の目的と私達の教室が目指したものがだぶって見えるからです.
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