特集 内科診療にガイドラインを生かす
救急
外傷初期診療ガイドライン
今 明秀
1
1八戸市立市民病院救命救急センター
pp.475-478
発行日 2013年11月1日
Published Date 2013/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402107150
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はじめに
厚生労働省平成22年人口動態統計月報年計によれば,不慮の事故として集計される外傷死は年間40,583人で,全死亡の3.4%を占める.この数値は10年以上にわたり大きな変動なく,大きな注目を集めているとはいえない.しかし外傷死亡は40歳未満の若年者に多く発生しており,障害調節生存年や損失生存可能年数などの調整係数を用いた検討によれば,悪性新生物や自殺に次ぐ第3位に位置するなど,社会的損失は非常に大きい.一般に外傷死亡は時期により3つに分類される.第1は現場で即死に近いもの,第2は呼吸障害や出血により受傷後2~3時間後に,第3は多臓器不全や敗血症で数日から2~3週後に,それぞれピークがあるとされる.このうち医療介入によって効果が見込めるものは第2のピークであり,外傷においては初期診療の良し悪しが生命予後に直結している.
このように,外傷初期診療は生命あるいは機能予後に対して決定的な意味をもつ.しかし,実際の診療に求められる意思決定のアルゴリズムや手術などの決定的治療手技はいずれも非常に独特で内科や外科診療とは大きな解離があるため,外傷診療に特化した十分な訓練と経験が欠かせない.このため,限られた熟練者以外でも外傷初期診療の質を一定以上に保つため,初期診療の標準化が世界的に強く推進されている.
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