書評
―和田隆志・古市賢吾―AKI(急性腎障害)のすべて―基礎から臨床までの最新知見
柏原 直樹
1,2
1川崎医科大学腎臓・高血圧内科
2川崎医科大学臨床教育研修センター
pp.533
発行日 2013年3月10日
Published Date 2013/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402106723
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ベッドサイドでの臨床医による緻密な観察と洞察によって新たな疾患・病態が発見され,疾患概念が確立される.AKI(急性腎障害)もその典型例であろう.「急性腎不全」とAKIはどこが異なるのであろうか.刻一刻と病態が変化する重症患者を多く診る医師たちは,きわめて軽微な急性の腎障害がその後の生命予後に大きな影響を与えることを喝破した.「急性腎不全」では遅いのである.AKIは腎臓に加えられた侵襲を最早期の段階で把握し,腎不全への移行を阻止し,生命予後を改善するために生まれた概念である.病理組織や病因論に基づいて理路整然と体系づけられた古典的な疾患概念とは異なり,救命に奔走する医師たちの臨床現場での迫真の議論から生まれたきわめて実践的な病態概念でもある.
AKIは感染症,心疾患,血液疾患,薬剤使用など広範な原因によって,さまざまな診療現場で発生する.したがって,専門性の如何にかかわらずAKIの病態を理解し,予防と治療法を知る必要がある.重症患者を受けもっているレジデント,研修医にとっては,「待ったなし」の事態といえよう.この「今そこにある危機」に対処するために編纂されたのが本書である.その内容の充実は「AKIのすべて」の書名を裏切らない.編纂者を含めて現時点での望みうる最良の執筆陣である.AKIの診療と研究の最前線に身を置く,新進気鋭の臨床医・研究者が診療・研究の手を休めて,寸暇を惜しんで執筆したのが本書である.
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