書評
―石井 均 著―糖尿病医療学入門―こころと行動のガイドブック
田嶼 尚子
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1東京慈医大・糖尿病・代謝・内分泌内科学
pp.769
発行日 2012年5月10日
Published Date 2012/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105969
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糖尿病診療においては,患者の考え方や生活背景など,個人個人が置かれた状況を尊重することや,医療者と患者の双方向における意思の疎通が欠かせない.しかし,このような側面はサイエンスとしては取り扱いづらく,近代医学ではともすると後回しにされてきた.この点についても知りたいと思っている諸兄姉にとって,このたび上梓された『糖尿病医療学入門――こころと行動のガイドブック』はまたとない良書である.糖尿病と心理に関する第一人者である石井均先生が,長い間にわたって,感じ,考え,そして実践してこられた経験のすべてが盛り込まれているからである.加えて,人と人との信頼関係や心の問題を取り込んだ新たな糖尿病医療体系を「糖尿病医療学」と名付け,これを興したいという著者の強い信念が流れている.
とはいえ,糖尿病の診療において大切な基礎知識をもたずに,医療学を論ずるわけにはいかない.そこで基礎編のPart1では,血糖コントロールについて患者が知っているべきことが簡潔にまとめられている.この章を読むと,医学的な要因のみならず,行動学的な要因が血糖コントロールに影響することがわかる.例えば,血糖自己測定(SMBG)をすることができると確信し,それを実践して,血糖コントロールが改善すればSMBGを継続するという行動につながる,などがその一例である.
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