今月の主題 アレルギー疾患を疑ったら,こう診る!
Column
造影剤アレルギー
森本 佳和
1
1医療法人和光会山田メディカルクリニック
pp.234
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402104319
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X線検査で用いる造影剤はベンゼン環を基本構造としてヨード原子3個を含む安定した化合物(トリヨード剤)の溶液である.この造影剤によって,蕁麻疹,悪心といった軽度な反応から,呼吸困難,急激な血圧低下,心停止,意識消失などの重篤な反応がみられることがある.造影剤によるこのような反応はIgEに依存するⅠ型の即時型アレルギーによるアナフィラキシーに類似しているものの,ほとんどのケースで造影剤に特異的なIgE抗体は関与せず,古典的な「アナフィラキシー反応(anaphylactic reaction)」と区別して「アナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)」と呼ばれる.このアナフィラキシー様反応の生じる正確なメカニズムは明らかではないが,造影剤の高い浸透圧やイオン性であるという物理的な特性によって,肥満細胞や好塩基球からのメディエーターの直接的放出を惹起することが原因の1つになるといわれている.そのため,例えば皮膚検査,特異的IgE検査やリンパ球幼弱化試験などは意味をもたず,造影剤によるアナフィラキシー様反応をあらかじめ予測することはできない.「過去に造影剤を用いた検査で反応がみられた」「アトピー体質をもつ」「重篤な心血管系疾患がある」といったことが危険因子になる1,2)ので,病歴聴取が重要になる.なお,エビ・カニのアレルギーと造影剤アレルギーに関連はない3).
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