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Helicobactor pyloriと胃MALTリンパ腫,胃がん
Helicobactor pylori(HP)は1982年オーストラリアのWarrenとMarshallらにより慢性胃炎患者の胃粘膜より分離されたグラム陰性らせん状細菌である.HP感染は開発途上国では小児期で既に70~80%以上の高い感染率を示すが,先進国では途上国より低く40歳以上で約50%の感染率を示す.わが国のHP感染率は若年者では,10~40%程度,40歳以上では80%以上の感染率である.HPは鞭毛,ウレアーゼ,カタラーゼ,アドヘジン(接着因子),空胞化毒素(VacA),熱ショック蛋白(HSP),毒素関連蛋白(CagA)等の病原因子を有する.現在,HP感染による胃粘膜障害はmultifactorial(多因子性)なメカニズムにより引き起こされるものと考えられている.代表的なウレアーゼは尿素を分解し,アンモニア産生により,胃酸を中和する.また,アンモニアは胃粘膜傷害作用を有する.菌側病原因子のほかに,本菌感染に引き続いて胃上皮細胞が産生する各種サイトカインや好中球,マクロファージが産生する活性酸素などもHPの病原因子に加えられ,胃癌,MALTリンパ腫を含む種々の疾患との関連が研究されている.
human papillomavirusと子宮頸がん
子宮頸がん,特に扁平上皮がんの発生過程は,ヒトがんの中でも特によく研究されているもののひとつである.これによると,扁平円柱上皮接合部近辺の円柱上皮下にある予備細胞が増生する過程において,何らかの原因によって異形成が生じ,それが上皮内がんを経て浸潤がんへ進展すると考えられている.この認識は,それまでに集積された膨大な追跡調査の結果から生まれたものである.さらに,1980年代には,頸部異形成および頸がんの発生過程に,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)が関与している可能性が指摘された1).その後,基礎・臨床の双方にわたる多数の研究成果により,このウイルスが頸部異形成および頸がん組織に高率に検出されること,またこのウイルスにはin vitroにおける発がん能力があることが証明された.現在,HPV感染は,子宮頸がん発生に最も重要な因子と目されている.
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