今月の主題 内科外来でみるウィメンズ・ヘルス
主治医として知っておきたいこと【女性の健康問題の背景に迫る】
Topic7 DV被害者と不定愁訴―Medically unexplained symptoms
武田 裕子
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1三重大学大学院医学系研究科地域医療学講座
pp.2332
発行日 2007年12月10日
Published Date 2007/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402103145
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家庭内暴力(domestic violence:DV)あるいは親しいパートナーによる暴力(intimate partner violence:IPV)の被害歴と健康状態の低さとの関連を示す報告は少なくない.性的暴行や児童虐待なども含め,さまざまな形の暴力を複数経験することで抑うつ症状や多彩な身体症状が長期により深刻に現れるという報告もある.
何らかの身体症状を主訴に医療機関を受診するも器質的疾患の存在が明らかでなく,その後も繰り返し外来を受診するほど強い症状が持続する場合,その症状を“medically unexplained symptoms:MUS(医学的説明のつかない症状)”と呼ぶ.MUSを特徴づける要素として,高度の抑うつや心理的困窮との関連,頻回な受療行動と並んで,過去における身体的ならびに性的虐待が挙げられている.疲労感や痛みを強く訴え,身体所見からは説明できないほど日常生活に支障をきたしていることが多い.IPV survivorsといわれる被害歴のある女性は,同年代の女性と比べて医療機関を頻回に利用し,医療費も約2倍費やされているという報告がある.ほとんどの場合,患者は身体的な症状で身体科を受診する.精神科受診を勧めても,断ることが多いという.
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