今月の主題 日常診療・当直のための酸塩基平衡,水・電解質,輸液
扉
藤田 芳郎
1
1藤田保健衛生大学医学部腎臓内科
pp.431
発行日 2007年3月10日
Published Date 2007/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102618
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約20年前,私が研修医であった頃はパルスオキシメータが普及しておらず,集中治療室などで頻回に動脈血ガスを採取する係が研修医の役割でした.雑用のように思えた血液ガス採取係に,少し大げさにいえば突然光を与えてくださったのが1986年5月号の黒川清先生の編集による『medicina』でありました.「血液ガス値を読むときに,簡単なステップを覚えるだけでこんなに鑑別診断あるいは病態生理に迫ることができるんだ」という喜びを教えていただき,腎臓の機能をよく知らないにもかかわらず,新研修医あるいは医学生に得意になって教えたことを思い出します.そのステップ方式は20年以上経った現在でも,研修医の期間に覚えておいたほうがよい必須項目です.
もう1つ,水・電解質の勉強をしているときによく思い出すのが,ヘンレループの「上行脚の一つの大きな特徴は,水に透過性がないこと」〔『日本醫事新報ジュニア版』(現在では『junior』と雑誌名が変更)No.274,1988年7月〕という黒川先生の文章でした.「Naが吸収されるときは水も一緒に吸収される,どの細胞も水の透過性はよい」と誤解していた自分にとって,「水に不透過な細胞があるとは!」と何度もその文章を読み返しました.これを理解することが,実は水・Na代謝を考えるうえで重要なかぎの一つとなることをその後少しずつ理解するようになりました.
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