特集 臨床医必携 単純X線写真の読み方・使い方
腹部
腹部石灰化をどう読むか―多様な所見を理解する
西井 規子
1
,
桑鶴 良平
1
,
三橋 紀夫
1
1東京女子医科大学放射線科
pp.234-241
発行日 2004年11月30日
Published Date 2004/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402101210
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典型的な症例
腹部単純X線写真で石灰化を認めたとき,その局在や形状から成因を推測できるが,臓器の重なりのため単純写真だけで診断を確定することは困難なことも多い.
症例は64歳,男性.胃泡に重なるように帯状に分布する小石灰化の集簇を認める. 両側の腎門部,左腎陰影のやや内側下方,小骨盤内にも多数の石灰化を認める.そのほか,下腹部に散在する結節状の高濃度領域も認められる.
これらはCT上,膵石(①),両側腎結石(②,④),左尿管結石(③),右尿管膀胱移行部結石(⑤)および腸管憩室や虫垂内に残存したバリウム(矢頭)であった.石灰化に比べてバリウムのX線透過性は低く,石灰化よりも高濃度で認められることが多い.
現在の画像診断は主にCTやMRIを中心として行われており,単純X線写真はそれらの前にスクリーニングとして撮影されることが多い.単純X線写真の利点として,胸部や腹部の全体像を一枚の写真で見ることができ,異常があればその概略を把握しやすい,ということがある.ここで述べる石灰化は単純X線写真で高濃度に描出され,検出感度は比較的高い.CTと単純X線写真では空間分解能が異なるが,X線で描出される石灰化病変はほぼ組織像に一致する.また,形状や分布の把握はCTよりも単純X線写真のほうが容易なことがある.腹部の石灰化には,単純写真のみでは成因や病態がよくわからないもの,臨床的にあまり意義をもたないと判断できるものから,疾患そのものや疾患の重症度を示唆するものまで含まれる.これらの多様な所見の理解は,病態の把握や次の検査法を選択するうえで有用である.
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