連載 地方分権による保健医療福祉活動の展開・3
高齢者ケアと介護保険制度
塩飽 邦憲
1
,
樽井 惠美子
1
1島根医科大学環境保健医学講座第二
pp.196-199
発行日 2002年3月15日
Published Date 2002/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902695
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高齢者ケアにおける地方分権
先進工業国や新興工業国で,人口の高齢化が急速に進行している.増加する高齢者は疾病と障害を高い割合で有するため,「寝たきり老人」,「老人虐待」,介護する女性の「介護地獄」,医療機関への「社会的入院」や高騰する老人医療費などの社会問題を引き起こした.高齢者介護問題を深刻にしたのは,経済成長の停滞である.持続的な経済成長によって吸収されていた老齢年金や医療費の増加が大問題となったために,1980年ごろから先進工業国では,高齢化に対応した保健医療福祉システムの改革が試みられた1〜4).
第一の改革は,高齢化や慢性疾患化に対応した効率的な医療システム実現のために,高コストの病院中心の医療システムから地域医療への移行である.第二は,保健医療と生活支援(福祉)のサービス統合である.高齢者では老化や慢性疾患に身体・心理・精神的な障害が加わっており,医療の他に,生活支援,生きがいを引き出すコミュニティ活動の重要性が増している3).第三は,高齢者の保健医療福祉システムの設計・運用を国から地方自治体に移すことであるが,改革の方法は,国によって異なっている(表1).
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