報告
健康危機管理の観点からみた中国地方の保健所とその統合組織の分析
藤本 眞一
1
,
新村 春香
1
1県立広島女子大学生活科学部人間福祉学科人間発達コース
pp.472-477
発行日 2001年6月15日
Published Date 2001/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902535
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疾病構造の変化や少子高齢社会の到来により,行政による保健サービスの提供方法も,保健・医療・福祉の一体的な提供の促進など変化しつつある.そういった社会情勢の中で,都道府県・指定都市などにおける対人分野での保健事業対象者と福祉事業対象者がほぼ同一であることにより,組織を統合したほうが効率的であるとする議論が平成元年ごろから見られ,中国地方の県を中心に保健所と福祉事務所(以下,社会福祉事業法第13条第6項に規定する福祉に関する事務所を,福祉事務所.)の統合を図る動向が見られた1〜4).平成5年4月,広島県は全国で初めて保健所と福祉事務所を統合した.その後,中国地方の隣県(以下,中国5県)の保健・福祉組織はすべて統合された.また平成9年の地域保健法の制定や平成10年の地方分権推進計画の策定5)などにより,地域保健の主体はますます住民に身近な市町村とされるようになり,保健所を巡る制度面での環境も大きく変化していった.一方,保健所は「サービスの供与」よりは,「社会防衛」的機能の信頼維持が重要であると指摘されており6),近年いろいろと話題となっている「健康危機管理」について十分な対応が期待されている.そこで,本稿では中国5県に注目し,各県ごとに保健所およびその統合組織の現状を調査し,「健康危機管理」の観点から,統合組織の長(以下,センター長)や保健所長の権限を分析し,統合組織の機能上の問題点などを指摘することを目的とする.
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