特集 公衆衛生と個人情報保護
地域がん登録事業と個人情報保護
大島 明
1
1大阪府立成人病センター調査部
pp.561-566
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401902344
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地域がん登録の現状と仕組み
地域がん登録は,「一定地域に居住する人口集団において発生したすべてのがん患者を把握し,その診断,治療に関する情報,ならびに予後情報を集め,保管,整理,解析する仕組み」と定義される.わが国の地域がん登録は,1950年代後半に宮城県,広島市,長崎市で開始された.いずれも疫学調査を主要な目的としていた.続いて,1960年代になって愛知県,大阪府,兵庫県,神奈川県などでがん登録事業が府県のがん対策の一環として開始された.以降がん登録を実施する府県は徐々に増加してきたが,1983年2月の老人保健法の施行に伴う国庫補助の開始によって府県がん登録の数はさらに増加し,1999年現在,34道府県市でがん登録事業が実施されている(表).
図1には,大阪府がん登録を例として,地域がん登録における登録情報の流れを示した.医療機関では,定期的に,あるいは診療の区切りごとに,退院抄録などの記録に基づきがん患者の届出を行う.このデータは,中央登録室である大阪府立成人病センターにてコーディングされ,入力される.一方,中央登録室には保健所から死亡小票が送られ,がんの記載のあるものが登録される.中央登録室では,これらのデータを整理し,罹患率の集計・解析を行う.さらに,診断後5年あるいは10年の時点で生死不明のものに対して,保健所の協力を得て,住民基本台帳の閲覧により生存確認調査を行い,生存率の集計・解析を行う.
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