特集 公衆衛生の現地訓練
医学生の公衆衛生実習を考える—特によりよいテーマ実習を求めて
守山 正樹
1
1福岡大学医学部公衆衛生学
pp.548-554
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901931
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公衆衛生学は,社会で生活する人々の健康を,その環境とともに,全人的に捉え,その保持増進を計るための原理・技法・実践を追求する科学だと考えられる.この公衆衛生学を医学部で学生に教えるに当たって,机上の空論に終わらせないために,実習は必須である.その際,現場の公衆衛生活動に触れてそこから学ぶ保健所実習が大切であるのはいうまでもないが,学生自らが課題を設定し,資料集め・調査などを経て,自分なりの回答を見いだしてゆくテーマ実習も,保健所実習に劣らず重要なものである.しかしどのようなテーマ実習が最善かを見極めようとすると,ことはそれほど簡単ではない.筆者自身,医学部の学生時代から現在に至るまで,様々なタイプのテーマ実習を,最初は一学生として,また医学部に職を得てからは指導する立場で経験してきているが,いまだに「この方法でいいのだろうか,もっと良いやり方はないだろうか」と悩んでいるのが現状である.それぞれに独自の公衆衛生実習を定着させながら,それに満足することなく,よりよい実習のあり方を目指して検討を重ねておられる全国の社会医学関連諸講座の努力を,毎年相互にお送りいただく各実習報告書から読み取るにつけても,実習のあるべき姿を一概に論じるのは容易なことではない.しかしテーマ実習に関する筆者の試行錯誤の結果,特に対話・体験型実習の重要性が浮き彫りにされてきたことも事実である.
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