視点
新しい時代の感染症対策—伝染病予防法の見直し
竹田 美文
1
1国立国際医療センター研究所
pp.538-539
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901928
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伝染病予防法の見直しは必要か
現行の伝染病予防法は,明治30年(1897)に施行された法律である.当時の伝染病の流行はすさまじく,例えば赤痢患者が年間10数万人に達した年があるし,コレラも明治27年には死者4万人と記録されている.こうした状況の下で,伝染病予防法の施行により国内における感染源を封じ込めて伝染病の拡大を防止しようとしたことは,当然であったと考えられる.そのため,伝染病予防法には,「病毒感染の疑ある者を隔離所其の他適当の場所に隔離すること」,「人民の群集することを制限し若は禁止すること」といった措置が規定されている.
100年たった現在もこの法律が生きていること自体,驚きというほかない.いうまでもなく,伝染病を取り巻く状況は大きく変化している.まず伝染病という言葉そのものが死語に近く,感染症という用語に置き換えられている.伝染病という言葉が,伝染病予防法に規定する,法定伝染病および指定伝染病(現在14種類)に限定されるきらいがあるからである.
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