特集 介護保険制度の特質と論点
介護保険制度と医療—主として制度的な見地から
植松 治雄
1
1大阪府医師会
pp.313-317
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901685
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21世紀を目前に控えたわが国は,急速な高齢社会を迎える中にあって,少産少子化の問題とともに高齢者対策が非常な重要課題となっている.とくに,介護問題を論議する中で最も重要課題と思われるのが,社会保障制度審議会将来像委員会が示しているように現在の年金5,医療4,福祉1という社会保障費の配分が,どうしても5対3対2にならざるを得ない点である.また,この点を医療保険の側から考えてみると,医療費が年間1兆円の伸びを示しているが,この中身の変化を見ると,長年の流れの中で,これが診療所から病院へとシフトされてきていることが著明になってきている.
現在,高齢化が進むなかで,人口の9.8%の70歳以上の老人の医療費が,国民医療費全体の30%以上を占めるに至ったという現実があり,老人医療費をさらに分析をしてみると,その多くの部分が収容医療に流れている(図1).その中身をさらに分析してみると,社会的入院が医療費を大きく押し上げている実態が明らかになり,国においてはこれをなんとかしていく必要があるとの考え方が出てきた.そこで考えられたのが,病床規制や療養型病床群であり,さらには,在宅医療という形で社会的入院をなんとか病院から押し出していこうとする考え方である.
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