報告
海外旅行者が持ち込むエンテロウイルス—名古屋空港における5年間の成績
石原 佑弌
1
,
磯村 思无
1
,
柳井 慶明
2
,
寺澤 徳昭
2
,
山下 照夫
1
,
小林 慎一
,
栄 賢司
,
森下 高行
,
西尾 治
,
三宅 恭司
,
岩本 恭平
,
高橋 正樹
,
大神 田実
Yūichi ISHIHARA
1
,
Shin ISOMURA
1
,
Yoshiaki YANAI
2
,
Noriaki TERASAWA
2
1愛知県衛生研究所
2名古屋検疫所名古屋空港出張所
pp.581-584
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401900409
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●はじめに
近年,わが国における感染症は衛生環境の向上,ワクチンによる予防,抗生物質による治療などによって著しく減少している.しかし,愛知県の伝染病関係資料1)によると,法定伝染病で経口感染する疾病のうち輸入事例の占める割合は昭和53年12.4%,58年28.9%,63年には79.5%と確実に増加している.これは,国内感染が減少したために輸入例が相対的に増えたことと,衛生状態の低い発展途上国を含む,外国への旅行者が増加傾向にある状況下で,海外での感染者数の増加も原因と考えられる.さらに,旅行者は統計に計上されない法定伝染病以外の病原微生物にも感染して,発症の有無にかかわらず国内に持ち込んでいることが推測される.実際に,当県では昭和41年からウイルス性疾患の病因について,サーベイランスをしているが,それまでわが国に存在しないと考えられていた,エンテロウイルスのなかの特定血清型が突然小児の間で流行する事例に度々遭遇した.2〜4)この流行の発端は,恐らく旅行者などが国外で感染し,キャリアとなって持ち込み,そのウイルスが何らかの条件下で広がったのではないかと推測される.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.