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はじめに
ブラジル連邦共和国(以下、ブラジル)は、金融・世界経済に関する首脳会合(G20)の2024年の議長国になり、2025年国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)をアマゾン地域で初開催するなど、今年度来年度と国際的な議論をリードする国の一つである。そのようなブラジルの保健分野の現状を踏まえ、UNICEFブラジル事務所で保健専門官として働いた経験を基に、UNICEFブラジルでの保健プロジェクトを報告する。なお、執筆内容は所属する組織等とは関係なく、個人の見解である。
ブラジルは世界第11位の国内総生産(gross domestic product: GDP)で高位中所得国に分類される新興国であり1)2)、国際機関等からの支援卒業国である。そのため、他国からの金銭的な支援を受ける機会は限られている。UNICEFにおいて支援プログラムに用いる通常予算は、最も支援を必要としている子どもたちに最優先に支援が届けられるよう、以下の三つの指標を基に優先順位を判断した上で各国・地域に配分される。三つの指標とは、①5歳未満乳幼児死亡率が高い国、②1人当たり国民総所得が低い国、③子どもの人口が多い国である3)。世界全体でみると5歳未満の乳幼児死亡率がかなり改善され(出生1,000人当たり14人4))、GDPが高いブラジルにはUNICEF本部からの援助金はほとんど分配されない。しかし、経済格差(2022年ジニ係数0.518)を背景とする貧困層(0歳から14歳人口の49%が貧困と推定される)の社会課題が多く残っている5)。そのような社会課題に対応するため、UNICEFブラジルでは、主にブラジル国内の個人からの寄付や企業等からの寄付によって活動を行っている。UNICEFブラジルの2022年の寄付受領額は約USD16.9百万(約25億円)となっている6)。また、ブラジル国内に首都ブラジリアの本部と8つの地区事務所とベネズエラ難民の対策としてボア・ビスタに臨時事務所が配置され、比較的規模の大きな国事務所となっている7)。UNICEFブラジルは、社会経済的に脆弱な北部や北東部の州(アマゾン州を含む)などを中心にブラジル全土で、本論で述べるような保健分野の活動を含めて子どもたちへの教育や保護などさまざまな分野の取り組みを行っている。
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